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高い材料を仕入れ、高い付加価値をつけて、利益を稼ぐビジネスモデルの成功事例
「価格」を高めても顧客に「お得感」を感じてもらいながら、同時に企業の「利益」も増やすビジネスモデルをどのように作っていけばよいのでしょうか?
今回紹介する印章業を営む小規模事業者が取り組んだビジネスモデルの成功事例から学びとり、他の業界に活かすことで、あなたのビジネスの実現性を高めて頂ければと思います。
A店のビジネスモデル事例
高い材料を仕入れ、高い付加価値をつけて高値で販売し利益を稼ぐビジネスモデルについて、印章業を営む小規模事業者A店の成功事例を紹介します。
A店の概要
A店は、大阪府を所在地とする、印章彫刻一級技能士が丹精込めて印章を制作し、店舗にて印章を商品販売する印章業です。事業内容は、印章(印鑑・ゴム印等)の制作・販売事業、はがきや名刺等の印刷加工事業の2つであり、直近の売上高は約900万円です。
A店の強み
①A店の代表は、印章業界に長年従事し、多くの優れた技能を有しており、地域における希少性と高い模倣困難性を有しています。特に、印影の美しさと偽造防止を両立する技能、印面への文字をバランスよく配置する技能、印章の文字を生き生きとしたものに変化させる仕上げ技能に優れています。さらに、全国での技術競技大会等において多くの賞歴を有しており、後進の若手技能者の模範となっています。
②顧客の状況やニーズの汲み取り力が高く、要求スペックを的確に見極めた上でスペック選定を行い、懇切丁寧に商品説明を行うソリューション力を有しています。
A店を取り巻く外部環境動向
【脅威・リスク】
A店は、店内での商品説明と販売を行う対面形式をとっていたため、コロナウィルス感染症拡大に伴う来店客数の大幅減少が見込まれています。また、汎用性の高い標準品においては、競合店やECとの差別化が困難であり、価格競争に陥っています。
【機会・チャンス】
お祝いの贈り物用の印鑑や、独立開業時の会社印などは、一生ものであり、顧客の心に響く手書き文字の唯一無二のオリジナル性が求められる場合があるため、顧客の支払意欲をより高め、かつ価格を高めてもより大きな顧客価値(お得感)を創出できる市場機会が見込まれています。さらに、①品質保証期間の延長、②材質の高級感や耐久性、③印影の美しさと偽造防止の両立などのニーズが発生しており、A店の強みが活かされる市場です。
また、事前調査により、専用彫刻設備導入と製造プロセス変更により、A店の労働生産性の向上が見込まれることがわかっています。
A店の戦略とビジネスモデルの方向性
以上から、A店の強みを活かしつつ、市場ニーズに対応するための方向性を以下に示します。
(1)A店の「強み」である技能、ソリューション力を活かせる贈答品などの「オリジナル特注品市場」をターゲットに選定し、マーケティング強化(例えば、顧客に見やすい場所での印章アドバイザーを示した看板設置や新商品の陳列見直し、ホームページによる有益な情報発信など)を図る。また、顧客の要求品質を満足する仕入れ材料の選定見直しを行う。
(2)来店客数増にこだわらず、一人一人の顧客満足度を高める「対話の質と量」を増やして、「顧客の支払意欲(WTP)」を高め、客単価の向上を図る。
参考:顧客の支払意欲(WTP)http://www.fushimi-consulting.jp/news/1530/
(3)設備導入と利活用、製造プロセス見直しによる労働生産性の向上(コスト適正化)を図る。
参考:労働生産性を高める3つのポイントhttp://www.fushimi-consulting.jp/news/1578/
(4)(3)を後押しする補助金施策を有効活用して、資金繰りを改善する。
A店の取り組みとその効果
A点の現状の取り組みとその効果を以下に示します。
(1)より大きな顧客価値を創出する仕入れ材料の選定見直し
【効果】
新素材チタン仕入見直しによって、書体の精密性とデザイン性、最終仕上げによる高級感、耐久性などの品質の向上を図ると同時に、従来と比較して仕入れコスト増加でも高い顧客の支払い意欲の創出と高い価格設定によりA店の利益拡大に結び付けています。
(2)外注工程の完全内製化および設備効率性の高い専用チタン彫刻機(ソフトウェアITツール含む)導入と利活用
【効果】
受注から納品までの総リードタイム短縮(Before:8日⇒After:1日)による顧客満足度の向上と、加工費を従来の約1/4程度の削減を図ることで、労働生産性を高めています。
(3)(2)を後押しする小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型)の申請
【効果】
補助金採択により設備投資の約2/3の補助を受けることで資金繰りの改善を図っています。
まとめ
高い材料を仕入れ、高い付加価値をつけて利益を稼ぐビジネスモデルの事例について紹介しました。特に、新ビジネスの立ち上げでは、ぜひ、今回の事例をあなたのビジネスに活用できないか検討してみてください。他の業界の成功パターンから学び取り応用することで、あなたのビジネスの実現性を高めて頂ければと思います。